猛虎の駆けた道 長州動乱篇

歴史からその名を消された、侍の奔走。

 戦国時代からの因縁を抱えている幕末の長州藩には、日本の未来を憂える若者たちが多く学んでいた。
 吉田松陰の元で学んだ赤禰武人は、同門の久坂玄瑞や高杉晋作らと御楯組を結成。攘夷を実行できない不甲斐ない幕府の代わりに夷狄を駆逐しようと若い情熱を燃やしていた。MY-003

猛虎の駆けた道 箸休め篇

影から陰を支えた者たち。

 多摩に残された沖田総司の知人、関田庄太郎の物語『総領の覚悟』、長州藩の赤禰武人と行動を共にすることになる淵上郁太郎を描いた『虎視譚々』の短編2編を収録。
 新選組と長州藩の動向がわかる年表付き。CB-001

猛虎の駆けた道 京師誠忠篇

信じるのは仲間、駆けるのは武士の道。

 京の宿屋の若旦那、野里大力は、八月十八日の政変により運命を狂わされることとなった。
 全てを失った大力の前に翻る誠の旗。
 大力は自らの手で定めを切り開くことを選び新選組に入隊。
 先輩隊士の柄元壮治郎らと共に京の治安を守る為日々奔走する。
 生きる場所を得た大力は、更なる歴史のうねりに巻き込まれていく。

初版本をお買い上げ頂いた方向け
正誤表

一片の雪

雪の降る季節、それぞれの抱く思い。

『観覧車と空』『雪』『六花』の3編を収録した短編

創作庵 月雪花 (著), 巴乃 清

冬に纏わる『観覧車と空』『雪』『雪花』の3編を収録した
オムニバス掌編

Kindle版 150円
※Kindle Unlimitedの方は無料でお読み頂けます。

紙書籍版 200円

試し読み

 結婚するという話を聞いたのは、人伝だった。五十嵐祐次はなんとも言えない気持ちでそれを聞いた。
『やっぱり知らなかったんだ』
 という、それを伝えてきた昔の仲間の言葉尻が、余計になんとも言えない気持ちを増長させた。
 久しぶりに自宅の電話機を使ったな、とぼんやり思いながら受話器を置く。
「結婚、か」
 思わず呟いてみる。女性ほどではないのかもしれないが、周囲からのプレッシャーを感じないでもない。自分の父親が三十二歳の時は自分の小学校の入学式に出ていたと思うと、多少の焦りも感じる。親しい友人で結婚しているのはまだ少数だが、そろそろ所帯を持つのも悪くはないと思う。
 祐次は窓を開けて、薄汚れたサンダルを履いてベランダへ出た。肌寒い空気が部屋に吹きこんでくる。枯葉が吹き飛ばされるのを見て、余計に物寂しい気持ちになって苦笑いをした。

観覧車 より